沖縄紀行


以前、沖縄に行った時のことです。

空港に到着し、そこから目的地へと向かうために、バスに乗りこみました。
発車時刻までしばらくあったので、行き交う人をぼんやりと眺めていました。

そろそろ発車時刻かなと思っていると、運転手さんと観光客らしき人が
バスの入り口付近でなにやら話しています。
どうやら、その人はバスに乗りたいようですが、連れの人がなかなか来ないようです。

発車予定時刻になってもいぜんとして出発する気配はありません。
すると運転手さんから、その人を待つという旨のアナウンスがありました。

正直、驚きました。
他に何人かの乗客はいましたが、誰からも目立った反応はうかがえません。
結局、5分程遅れて、ようやくバスは発車したのでした。
 
これもウチナータイムっていうものなのでしょうか。
こっちでは、そんな場面に出くわしたことはありません。
発車時刻を遅らせることで、他の乗客からクレームが出るかもしれませんし、
そんなことを考えれば、親切心とはいえ、なかなかできることではありません。

そのときふと思いました。
これって、もしかしたら、沖縄のもつ雰囲気とか風土とか、沖縄の文化が
そんな対応を許容しているからこそ可能なのではないかと。

その観光客の人は運転手さんの対応にやさしさを感じたことでしょう。
しかし、これは運転手さんのやさしさだけでできることじゃなく、
沖縄文化がもつ包容力みたいなものがそれを支えているのかもしれません。

そう考えると、人の行動には、多少なりとも文化的な影響が及んでいるのだろうと
あらためて考えさせられたのでした。
 
ここでいう文化とは、国や地域という広範囲なものはもちろん、
職場や学校、そして家族もまた、独自の文化を持ち、
それが人の言動に否応なく影響を与えているように思います。
 
今回は、好意的な対応を目の当たりにしましたが、
逆に、人を束縛したり、不本意な状況に追いやってしまうような
”文化の圧力”に苦しめられることがあります。

カウンセリングでは、そんな影響の強さを感じさせられることがたびたびあり、
その力に巻き込まれないよう試行錯誤の作業がなされたりします。
それって言うほどには決して簡単なことではありませんが、
まず、自分がどういう状況に置かれているかを知ることは大切なことなんだと思います。

到着早々に沖縄らしさに遭遇し、色々と思いを巡らせたのでした。