カウンセリングと秋の空


ある日、車を運転していた人がいました。

緩やかなカーブの道を進んでいると、とつぜん何かが道に飛び出してきました。
慌ててブレーキを踏むと、それがネコだとわかりました。
ホッと胸をなでおろしつつ、先へと進みました。

しばらく車を進ませていたところ、またもや何かが道に飛び出してきました。
慌ててブレーキを踏むと、それが子どもだとわかりました。
肝をつぶしましたが、ともかく先へと進みました。

しばらく車を進ませていたところ、またもや何かが道に飛び出してきました。
慌ててブレーキを踏むと、それが大人の人だとわかりました。
腹立たしく思いながら、なんとか先へと進んだのでした。


同じような状況なのに反応が違ってくるのはおかしなものです。

ネコのときには驚きが、子どものときは驚きよりも安堵が、
そして、大人のときには安堵よりも怒りが湧きあがってきました。

なぜこんなことが起こるのでしょうか。


人は無意識のうちに、相手の行動になにかを期待しているのかもしれません。
それが期待通りにならないと、怒りが生じることもあるでしょう。

あるいは、人は状況から相手の言動の意図を読み取ろうとします。
その言動から悪意が連想されると、怒りが湧くこともあるでしょう。

ネコはそもそも交通ルールとは無縁だからあきらめもつきます。
子どもの不注意もよくあることですから仕方ありません。
大人が車に注意もせず飛び出したと思うと無性に腹が立ってしまうのかもしれません。

同じことが起こったとしても、相手次第で期待や連想も様々です。
もちろん、こちらの状況次第で受け取り方も変わってくるでしょう。
考えてみると当たり前のことなんですが、普段はあまり自覚せずにいるように思います。


カウンセリングでは、話に耳を傾けつつ、そういった状況についても考えていきます。

その気持ちが、どんな相手のどんな特徴に触発されているのか
その気持ちの背景では、どんな思いが影響を及ぼしているのか

カウンセリングを通して、言葉に込められた思いを丁寧に紐解いていきます。
その作業を通じた自己理解が、生き方を捉え直していくきっかけとなります。

こころに丁寧に触れていくことで、そのこころを守ること

それはカウンセリングの目的の1つです。